2020.4.20

派遣社員から直接雇用に切り替わることはある?引き抜きの話は受けても大丈夫?

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派遣社員として働いている方の中には、チャンスがあれば企業の社員として雇用されたいと思っている方もいるのではないでしょうか。実は、派遣社員として仕事を始めた場合でも、派遣先で雇用される場合があります。この記事では、派遣社員から直接雇用に切り替わるケースや、メリットとデメリットなどについて解説していきます。

1.派遣社員から直接雇用に切り替わることはある?

派遣社員として働いていても、派遣先に直接雇用されるケースがあります。しかし、派遣社員が仕事をする際、雇用契約を結ぶのは派遣会社です。では、派遣先に直接雇用されるケースとは一体どのようなものがあるのか見ていきましょう。

1-1.紹介予定派遣の場合

紹介予定派遣とは、決められた期間だけ派遣社員として働き、その後は派遣先で直接雇用されることが予定されている派遣のことです。企業に正社員として就職する場合、数カ月間の試用期間が設けられていることがあります。紹介予定派遣の場合、その試用期間にあたる時期を派遣社員として働くと考えればいいでしょう。通常の派遣と紹介予定派遣では、派遣期間にも違いがあります。通常、派遣社員として働く場合の期間は最長で3年間です。これに対して紹介予定派遣の場合は最長でも6カ月と決まっています。実際には派遣先によって期間は異なりますが、派遣されてから遅くとも6カ月後には直接雇用されるということになります。

紹介予定派遣であっても、あくまではじめの数カ月間は派遣元の会社から派遣されるという形です。その間は労働者側も企業側もお互いじっくりと見極めることができ、そのうえで直接雇用に切り替えるかどうかの判断ができます。しかし、紹介予定派遣は、派遣期間が終了すれば無条件で雇用してもらえるというわけではありません。派遣期間の後、労働者と企業側でお互いの意思が合致することが前提です。たとえ直接雇用して欲しいと思っても、企業側に希望してもらえないと派遣期間だけで終了することもあります。また、直接雇用に切り替えるには面接も必要です。紹介予定派遣は求人募集の際に明記されているのが一般的なので、直接雇用を希望する場合は該当する求人を探してみましょう。

1-2.派遣先から直接雇用を提案される場合

自社にとって戦力になる優秀な人材がいれば、ぜひ入社して欲しいと考える企業は多いでしょう。もちろん、それは派遣社員に対しても変わりはありません。そもそも、派遣社員を必要とするのは社内の人材が十分に足りていないという事情を抱えているときです。その一方で、正社員を雇用するのは慎重に検討したいという思惑もあります。社員として採用すれば、期待とは違っていたという場合でも、簡単に解雇することはできません。たとえ試用期間中に能力に疑問を感じても、無断欠勤の繰り返しなど正当な理由がない限り解雇はできないことになっています。

そのため、もともと新しい人材を確保したいと考えていた企業なら、派遣社員であっても直接雇用を提案される可能性は高いといえます。もしも派遣先から直接雇用の相談をされたら、特に問題がなければ応じるのもいいでしょう。両者の考えが合致すれば、派遣先が派遣会社に紹介手数料を支払い、社員として雇用されることになります。ただし、派遣先の社員として雇用される場合、注意したいことがあります。それは、社員に切り替えるタイミングです。派遣社員としての契約期間が残っているうちに社員として雇用されるのは、契約違反になる可能性が出てきます。

ここで誤解してはいけないのは、派遣先に引き抜かれること自体が違法ということではありません。労働者が自分に合った雇用先を選ぶことは自由です。そのため、派遣社員が派遣先と直接雇用契約を結ぶことを、派遣会社は反対できないことになっています。もちろん、契約書にもそのような内容を盛り込んではいけません。問題になるのは、派遣期間が終了していないときに直接雇用を結ぶ場合です。派遣会社とのトラブルを避けるには、派遣社の契約期間が終了してから直接雇用に切り替えてもらいましょう。

2.直接雇用のメリットとデメリット

はじめに、正社員として雇用される場合のメリットをあげていきます。一番のメリットといえば、雇用が安定することです。派遣社員として働いていると、契約期間が終了した後も更新してもらえるのか、または次の派遣先はすぐに見つかるのだろうかといった不安がぬぐえない方は多いのではないでしょうか。その点、企業に正社員として直接雇用されればそのような心配はありません。もちろん、給与面の安定も図れるでしょう。ボーナスや昇給も期待できるうえに、有給休暇も付与されることになります。企業によって細かい点は異なりますが、退職金の支給や雇用保険、各種手当てに社会保険などの福利厚生が用意されているのもメリットです。

一方、デメリットとしては、人間関係などトラブルに巻き込まれる可能性があげられます。もちろん、人間関係が良好な企業であれば心配は要りません。しかし、派遣社員のうちは外部の人間として距離をとってくれていても、同じ社員になると態度が変わる方もいます。正社員の場合でデメリットになるのは転勤や異動です。望まない部署への配置換えや、遠方への転勤を命じられることもあります。まったく経験のない業務を任されることも出てくるかもしれません。転勤先によっては、辞めざるを得ないことも出てくるでしょう。また、正社員の場合は責任のある仕事を任させることが多く、荷が重いと感じる方もいます。

2-2.直接雇用=正社員とは限らない

派遣先から直接雇用を提案されたら、通常は正社員での雇用をイメージするでしょう。しかし、そうではない場合もあります。よく話を聞いてみたら、実は契約社員だったというケースはよく珍しいことではありません。契約社員は、雇用期間に定めがある社員のことです。通常は1年単位で契約が更新され、正社員の無期雇用とは大きく違います。しかも、毎年必ず契約が更新されるという保証はなく、契約が終了することもあるのです。契約社員は正社員とは違い、非正規雇用という扱いになります。待遇面なども正社員とは異なる部分が多いので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

2-3.契約社員のメリット・デメリット

契約社員の場合も、メリットもあればデメリットもあります。はじめに、メリットにはどのようなものがあるか見ていきましょう。まず一つは、派遣切りの心配がないことです。派遣切りとは、まだ派遣契約の期間が残っているのに、打ち切りになってしまうことをいいます。派遣社員として仕事をする場合には、派遣先と派遣会社での契約であり、労働者が直接派遣先企業と契約を結んでいるわけではありません。何らかの事情で「派遣はもう必要ない」と派遣先の企業が判断すれば、契約期間の途中であっても打ち切りになることもあります。契約社員は正社員と比べて責任を持たされることが少なく、その分時間に融通が利きやすいといえます。よほど人手が足りないということがなければ、休日出勤などをすることはないでしょう。

契約社員のデメリットにあげられるのは、正社員の長期雇用が見込めないことです。1年ごとの契約更新であり、短期間での雇用になることが多いでしょう。待遇面が正社員のように手厚くないのもデメリットです。通常、契約社員であっても有給休暇は付与されますが、それ以外の福利厚生は見込めません。ボーナスなどの支給がないうえに、退職金もないため、将来に向けての蓄えを備えておくことも難しいといえます。また、役職がつくこともないため出世が見込めないこともデメリットです。ただし、契約社員を経て正社員に昇格できる場合もあります。派遣先から話が出たときには、正社員への可能性について聞いてみた方がいいかもしれません。

3.直接雇用の条件が合わない場合はどうする?

派遣先に直接雇用されることは嬉しいことでもある反面、デメリットになることもあります。「安定して働きたい」という気持ちを持つことは大切ですが、中にはその気持ちを利用するという悪質な企業もあるかもしれません。しかし、それに気づかずに提案に乗り、予想していない結果になれば早期で退職を余儀なくされることもあるでしょう。そのような失敗を防ぐためにも、提案があったときにはしっかり内容を確認することが重要です。紹介予定派遣の場合は、派遣期間のうちにどのような企業なのか見極めておきましょう。

派遣先から引き抜きの話を受けて、それが契約社員だった場合でも、中には正社員を見据えていることもあります。直接雇用の話を受けたら、まずどのような雇用形態なのかを確認しましょう。働くということは契約をともなうことなので、待遇も含めた条件や企業の考えを確認するのは大切なことです。口頭での確認だけでなく、できるだけ書面で提示してもらうようにしましょう。その際、待遇面など納得がいかない部分があれば、交渉する自信があればやってみる価値はあります。しかし、内容が希望からかけ離れているならしっかり断る姿勢が重要です。きちんとした内容の提示がない場合や、明らかに不利な条件の場合は直接雇用の話は受けずに、新しい派遣先を検討した方がいいでしょう。

派遣先から直接雇用の提案を受けたら慎重に検討しよう

派遣社員として働いていても、紹介予定派遣や引き抜きなど、企業から直接雇用されるチャンスはあります。しかし、契約社員の場合もあるので注意が必要です。また、正社員であってもメリットばかりではないので注意しましょう。派遣先から直接雇用の提案があったらさまざまな観点から判断し、失敗のないようにしっかり確認することが重要です。