2020.4.6

派遣先を退職するときにもらう離職票って?失業保険はもらえる?

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派遣社員でも失業保険を受け取ることができるのは、あまり知られていないようです。正社員でなくても、条件さえ満たせば雇用保険の加入もできますし、失業保険の給付を受けることもできます。雇用保険制度で保障される安心感があれば、求職活動の際も、派遣という選択肢を加えることができるでしょう。この記事では、失業保険や雇用保険制度、雇用保険加入の条件などについての疑問を解説していきます。

1.失業保険とは

失業して仕事がなくなったときに頼りになる保険が「失業保険」です。失業保険法の名残で「失業保険」の言葉が現代でも使われていますが、1975年の「雇用保険法」施行後は「雇用保険」が正式な名称です。雇用保険は、毎月の給与から健康保険や厚生年金保険などと一緒に差し引かれている強制加入の保険です。雇用保険制度は、何らかの理由により働けなくなったときの失業給付事業、労働者の能力開発や向上、再就職の支援などを目的としています。

失業は、会社の倒産や人員整理で止む無く失業することもあれば、病気や引越し、そのほかの理由により自己都合で退職して失業することもあります。すぐに再就職先が見つかればいいですが、タイミングが悪ければそうはいきません。無職で収入がないまま求職活動が長期化すれば、生活資金も乏しくなってしまうでしょう。そうなれば、求職活動にも支障を来たしてしまいます。家族を養わなければならない立場なら、生活のために希望しない会社に就職するような事態にもなりかねません。

そこで、失業中の求職者が安心して求職活動を行えるように保険金を給付してくれるのが「基本手当」または「失業等給付」と呼ばれるものです。一般的に「失業保険が出た」「失業保険をもらった」というのは、雇用保険制度から給付される「基本手当」や「失業等給付」という名の保険金のことを指しています。こちらの記事では、わかりやすく「失業保険」で説明します。

1.1失業保険がもらえる条件

失業保険の給付対象となるのは、大原則として雇用保険に加入していた方のみです。雇用保険は、正社員だけでなく派遣社員やパート・アルバイトなど、雇用形態に縛られず加入できる保険です。ただし、雇用保険に加入できるのは「1週間の労働時間の合計が20時間以上であること」「31日以上継続して勤務すること」の両方を満たしていることが条件です。たとえば、1日6時間の勤務を週3日というような働き方では雇用保険に加入することはできません。30日の期間限定の短期契約で働く場合も雇用保険の加入ができません。

反対に、1日4時間勤務を週5日、1日7時間勤務を週3日という働き方なら、1週間のトータルが20時間以上になるため、アルバイトでもパートでも雇用保険に加入できます。ただし、雇用保険に加入してさえいれば、誰でも失業保険が受け取れるわけではありません。失業する日より前の2年間に雇用保険に加入していた期間が12カ月以上あることが条件です。1カ所の会社で2年間雇用保険に加入していれば問題なく失業保険の給付対象となります。

2年のあいだにA社からB社に転職した場合、A社を退職してしばらく無職の期間があっても、A社とB社で雇用保険に加入していた期間の合計が12カ月以上あれば、失業保険を受け取ることが可能です。1カ月の区切り方は、失業した日からさかのぼった1カ月間を単位とします。給料日の締日など会社が規定する1カ月とは異なることに注意が必要です。その1カ月のうち、働いた日数が11日以上ある場合のみ1カ月に換算します。

ただし、雇用保険の加入期間の条件には一部例外があります。解雇や倒産などの会社都合による離職の場合は、それまでの1年間に雇用保険に加入していた期間が通算で6カ月あれば失業保険の給付対象になります。また、契約期間を決めて労働していた場合、満了後の契約更新がなく失業した場合も、以前の1年間に雇用保険の加入期間が通算で6カ月以上あれば失業保険の給付対象と認められます。

さらに、失業保険を受け取れるかどうかは、労働者本人に引き続き働く意志があることが重要な決め手になるのです。結婚退職や出産のための退職、または病気療養のための退職などで、今後はもう働く意志がないという場合は、原則として失業保険の給付対象にはなりません。しかし、今すぐには再就職できないが、落ち着いたらまた働きたいと希望するなら、受給期間の延長申請手続きをすることにより、失業保険を受け取ることができます。ただし、申請が遅れると所定給付日数の満額を受給できないことがあるため注意しましょう。

そして、失業保険がもらえる条件として一番忘れてならないのが、ハローワークに求職の申し込み手続きをして、失業保険の受給資格があるかどうかの認定をしてもらうことです。失業保険金(正しくは「基本手当」)給付の決定が出たら、4週間ごとにハローワークに出向いて同様の失業認定の手続きが必要です。以上の条件に当てはまり、正しく手続きを行った方が、定の失業保険を受け取ることができます。

1-2.派遣社員の雇用保険加入条件

派遣社員として働く場合は「本当に派遣社員でも失業保険を受け取ることが出来るのか」について、不安を持つ方が少なくありません。しかし「1.1失業保険がもらえる条件」の段落でも説明した通り、雇用保険の加入条件を満たすのであれば、派遣社員でもアルバイトやパートでも雇用保険に加入できます。加入条件とは「1週間に20時間以上労働する契約になっていること」「契約期間が31日以上であること」の2つを満たすことです。ただし、日雇い労働者の場合は、雇用保険の適用事業所に雇用されていれば誰でも雇用保険に加入できます。

また、季節的労働者は「契約期間が4カ月以上ある」かつ「1週間に30時間以上労働する」ことになっていれば、雇用保険の加入が可能です。ただし、繰り返しになりますが、雇用保険に加入してさえいれば誰でも失業保険がもらえるわけではありません。失業保険の給付対象となる条件に当てはまらなければ、失業保険は支給されない可能性があります。

2.失業保険を受け取るための必要書類

失業保険を受け取るためには、以下の書類が必要になります。会社から受け取った「雇用保険被保険者離職票1・2」、運転免許証やマイナンバーカードなどの「写真付きの身分証明書」を準備します。本人の顔写真付きの官公署が発行した資格証明書や運転経歴証明書などでも構いません。写真付きの身分証明書がない場合は、本人の身元確認書類として、公的医療保険の保険証や児童扶養手当証書などの2種類が必要です。

マイナンバーカードや通知カードなどの「個人番号が確認できる書類」も持参します。個人番号は、住民票記載事項証明書を取得して個人番号を記載してもらうことでも確認できます。また、失業保険を振り込んでもらうための「本人名義の普通預金通帳」または「口座番号のわかるキャッシュカード」が必要です。書類に貼付する「証明写真2枚」(縦3.0cm×横2.5cm、最近のもの)も準備しておきましょう。そのほかに「印鑑」を持参します。これは銀行印でなく認印で構いません。

3.離職票をもらうには

ハローワークに提出する「雇用保険被保険者離職票1・2」は「離職票」や「離職証明書」と呼ばれているものです。失業保険の申請手続きに提出しなければならない重要な書類ですので、無くさないように取り扱いには注意が必要です。「雇用保険被保険者離職票1」とは、正しくは「雇用保険被保険者離職票-1資格喪失確認通知書(被保険者通知用)」と記載されたものです。その書式とは別に「雇用保険被保険者離職票-2」と書かれたものがあります。離職の日以前の賃金の支払状況について記載されていて、失業保険の受給申請の手続きの際に必要になるものです。

この2枚の書類は、退職するときに会社から受け取る書類です。ただし、次の就職先が既に決まっている場合や、結婚や出産退職でもう働くつもりがない場合は離職票が不要になるため、会社で準備していないことがあります。不要ならは離職票が交付されません。万一、後日離職票が必要になった場合は、以前の勤務先に「離職証明書」を発行してもらい、ハローワークに提出すれば離職票を交付してもらうことができます。ただし、基本的には退職する本人が申請しなくても自動的に会社から送られてきます。なかなか届かない場合は、会社に確認してみてください。

4.失業保険を受け取る流れ

居住地を管轄しているハローワークに必要書類を持参し、求職の申込みを行います。書類確認と対面の質問などにより失業保険の給付についての資格審査が行われ、問題がなければ受給資格ありと決定されます。その後、雇用保険受給者初回説明会の日時が伝えられるので、指定の日時に必ず出席してください。初回の説明会において、雇用保険制度のしくみや失業保険の受給の流れなどの説明がされますので、よく理解しておきましょう。「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡され、1回目の「失業認定日」が決まります。

以降は、4週間ごとに「失業の認定」をしてもらうため、指定された日にハローワークに出かけて担当者との面談を行います。失業中の求職活動の状況報告を行うことになりますが、まだ次の就職先が決まらなければ「失業中」と認定されます。つまり、失業保険の本来の目的である、求職活動を円滑にするための資金援助という意図がある以上、求職活動をして次の就職先を探していることを客観的に判断できる実績が必要になるのです。自宅に届く新聞折り込みの求人広告を見たり、インターネットで求人サイトなどを閲覧したりするだけでは求職活動とは認めてもらえません。

実際にハローワークで求職相談を行った、求人先を紹介してもらい面接を行ったが就職に至らなかった、ハローワーク主催の講習やセミナーを受講した、地方自治体などの公的機関の職業相談を受けたなどの証明が必要になります。これらの求職活動を行わず、虚偽の申告をした場合は、失業保険の不正受給となり厳罰処分が下されます。正しく申告して失業認定された場合は、通常1週間以内に自分の口座に失業保険が振り込まれます。

5.失業保険はどれくらいもらえるのか

失業保険の金額は「雇用保険被保険者離職票-2」によって算出されます。離職した日の直近の6カ月に支払われたボーナスを除いた賃金の合計を180で割って賃金日額を計算します。そうして出た賃金日額の約45~80%を「基本手当日額」とし、規定の基本手当の所定給付日数に基づき給付される仕組みです。パーセンテージは、賃金日額が低いほど高い率で計算されます。「基本手当日額」は、年齢の区分ごとに給付される上限額があらかじめ定められています。

ちなみに、令和2年3月1日時点のデータでは、30歳未満の基本手当日額の上限は6815円、30歳以上45歳未満では7570円、45歳以上60歳未満では8330円、60歳以上65歳未満では7150円です。また、失業理由や過去の雇用保険の加入期間によっても失業保険を受け取れる日数が異なります。

派遣社員でも条件次第で失業保険は支給される

派遣社員でも働く時間と期間が長ければ雇用保険に加入できますし、退職した際の失業保険も受け取れます。就職するにしろ派遣で働くにしろ、すぐに次の仕事が決まらない場合に備え、離職票を持参してハローワークで失業保険の申請手続きをしておくのがおすすめです。万一、無職の期間が続いたとしても失業保険を求職活動費に充当できますし、生活の不安も少しは和らぐでしょう。