トヨタの生産方式に関して

「機械加工工程での同期化」 第15回

青木幹晴

トヨタエンジン工場の工程図

例えば、完成エンジンが1分に1台ラインオフするとすると、エンジン組付ラインで作業する各作業者の作業を1分で完結させるようにする。こうなると作業者は1分作業をして、そのワークを次の作業者に渡せばよい。
 これは機械加工工程においてもまったく同じことだ。1つの機械はワークに対して1分間加工を加えたら、次の機械へそのワークを渡す。こうすればトヨタエンジン工場内の不要な仕掛在庫をゼロにすることができる。

小物製品機械加工U字セルラインの事例

このラインの場合、1分32秒が最長の加工時間になっており、それ以外の機械の加工時間はすべてそれ以下になっている。品質チェックも4回設定されている。
しかし多くの会社において上図 のような多数の刃具を備えて長時間加工して1個のワークを仕上げてしまうタイプの機械が見受けられる。こうなると品質チェックはすべての刃具が切削を終 わったあとにしかできない。もしそこで不良が発見されても、不良を作った加工後に複数の加工が行われてしまうので、廃却にするしかなくなる可能性が大きく なる。品質チェックはやはり切削の都度行うべきものなのだ。

長時間加工機と同期化された機械加工ラインとを比較

同期化された機械加工ラインで は常時、すべての刃具が稼働しているが、長時間加工機では1つの刃具が切削している間、その他の刃具はすべて休止している。従って長時間加工機で大量生産 がまったくできない。さらに長時間加工機は多数の刃具を擁しているため段取替えにおびただしい長い時間がかかってしまうし、機械本体も非常に大型で高価な ものになってしまう。
 逆に同期化された加工ラインではそれぞれの機械が非常に短時間しか加工しないため、小型で安価な機械でよい。従って段取り替えも非常に短時間に行うことが可能だ。
青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール
1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。
1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。
トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能 を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管 理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管 理)、などを経験。
一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。
2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。
退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。
2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。