1. ロット生産から1個流し生産へ

 ロット生産とは、1つの製品が複数集った集合体(ロット)を1工程ずつ生産していくことをいいます。この事例でいうと9個ロットが1工程、2工程、3工程とかたまりで生産されていきます。ここでロット生産の問題点を列挙します。

 これらの問題点をすべて克服するため1個流しラインにします。この1個流しラインにすることは極めて簡単です。まず1工程、2工程、3工程の機械を近接させ、そこに1個ずつ品物を流すだけでよいのです。その効果は以下の通り絶大です。

自動機械

監視中の

作業者

① 運搬の発生・・・・工程間を固まりで移動させなければならないため、運搬が発生します。そのため運搬具が必要になります。


② 不良の大量発生・・・作業者の不注意で不良を発生させてしまった場合、ロットで生産しているので多くの不良ができてしまいます。


③ 不良発生時に全数調査・・・加工した順番がわからなくなるため、トレーサビリティ(順番になっていて1つずつ追えること)がありません。よって不良が発生した場合、周辺にある在庫すべてについてかたっぱしから不良の有無を調査しなければならなくなります。


④ 長い生産リードタイム・・・・たとえば1工程で、ある部品が加工されても、その部品は残りの8個の加工を待っていなければ、次の2工程へ進めません(これを「ロット待ち」といいます)。さらに2工程へ到着しても、先着のロットがあればそれが終わるのを待たなければ、自分のロットが仕掛かりません(これを「工程待ち」といいます)。これらの待ち時間はすべて生産リードタイムに加算されます。

① 1個を自分で持って作業をしていくか、それを次の作業者に手渡しするかですので運搬は消滅してしまいます


② たとえば1工程で不良を発生させた場合、それがすぐ2工程へいくので、そこで不良が発見されます。いわゆる“現行犯”で不良が発見されるので、その原因も容易に追求できるのです。


③ 不良が間違って流れてしまった場合でも、トレーサビリティ100%なので、1つずつ順次調べていけば発生初品の発見は容易です。


④ 品物がその1個流しラインに仕掛かれば、その品物はすぐにすべての工程を流れます。したがって生産リードタイムは最短になります。それは中間の仕掛品がゼロになるということです。

 【改善前】<加工工程>もし不良が発生したら、この仕掛品の山をすべてチェックしなければならなくなります。膨大な工数もかかりますし、不良品が流出してしまう可能性が非常に高いです。考えただけでもぞっとします。

 【改善後】左の写真は1個ずつシュートで後工程の作業者へ送っています。後工程の作業者は受け取った品物が不良品でないか確認してから作業に入ります。また不良品は治具に嵌らないようなポカヨケを工夫しますと検査工数がぐっと低減できます。さらに写真には速やかに型交換を行うため、次に仕掛ける型が専用台車の上に準備してあります。

 【改善前】<組付工程>ロット生産をしていると、どうしても写真のように仕 掛品が散乱してしまいます。この状態で作業者は休憩時間になれば作業机を放れます。そして作業時間が終われば作業机に戻って来て作業を再開します。その際、こんな散乱した状態で、正確にどの品物から作業を再開すればよいのか分かるのでしょうか。組付け忘れが発生しそうで本当に心配になります。

 右の写真は、品物に日付印を押しています。きちっと整列させて並べているので押印作業自体は迅速にできると思います。しかし机の上に並べる工数や次工程へ送るため容器に再度並べる工数は相当なものになるのではないでしょうか。

 【改善後】1人の作業者が1つの品物を持って多数の工程の作業をします。そ うなると座って作業はできませんので、自然と立ち作業になります。また長い1つのラインを1人しか作業しませんと、出来高が減ってしまいます。そこで複数の人が間隔を空けて投入されます。これを「うさぎ追い」といいます。左の写真ですとAさんとBさんの2人が作業をしていますが、完成品はそれぞれ別々の箱に入れています。こうしますと、もしも不良品が発生した場合、どちらの人の作業ミスかを判断することができます。少し厳しいようですが、そうしないと再発防止の対策が打てないからです。

 右の写真のライン作業者の後ろに部品棚が設置してあります。作業者は部品がなくなると、空箱を後ろの部品棚に下へ投入し、部品の入った箱を持って、自分の前に置きます。

2.「トヨタ生産方式城」はしっかりした地盤の上でないと建たない

 しっかりした地盤というのは、生産リードタイムが最短、シングル段取(10分以内の型交換)が実現しているということです。今、日本のみならず多くの海外の会社へ改善指導に行っていますが、ほとんどの会社の地盤は軟弱です。したがってトヨタ生産方式の導入に入ることができません。そこで地盤固めを一からやるしかありません。①ロット生産から②1個流し生産へ、さらに③シングル段取化へと指導をすることになります。

 まず①ロット生産から②1個流し生産への移行で、「工程待ち」がすべてなくなり、生産リードタイムは劇的に減少することが分かります。さらに③シングル段取化で頻繁な段取替えが可能になるため、1回のロットが少量になります。これにより「ロット待ち」を減少させることができます。

 地盤固めが終わると、やっとトヨタ生産方式城の建設に着手できるようになります。そこで④自働化(機械が不具合を感知して自動停止する。機械も人間の働きをするということで自「動」でなく自「働」にしています)を進めつつ、⑤平準化仕掛けを行います。これにより⑥かんばんが回転するようになります。

 またトヨタ生産方式は、独特の⑦生産性評価体制を構築しています。どんなに現場が改善してもそれを的確に評価してあげないと、その改善は元に戻ってしまうのです。そしてこれらすべての仕組みを駆使して、生産が増えれば人を増やし、生産が減れば人を減らすことを可能にしているのです。このことを⑦少人化といいます。

1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。

1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。

トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管理)、などを経験。

一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。

2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。

退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。

2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。

青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール

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