平準化と定期便化はトヨタの生産ピラミッドのすべての段階で行われる。

上の図の横軸は1月稼働日20日、2月稼働日20日、3月稼働日20日である。縦軸は下から朝の始業で一番上が終業となる。1ヶ月単位で日当り生産数は同じにしており、さらに平準化仕掛けしてすべての車種を仕掛ける間隔は同じになっている。

 このような状態で、部品メーカーからの納入便を1日複数便にして、さらにその運行間隔を等しくすれば、すべての納入 便に同じの荷量が載ることが分かる。また便数を増やせば増やすほど、1台当たりの荷量は減り、ライン側置場の在庫も少なくなる。極端な話をすれば、1個ずつ運べば、生産ラインが直結しているのと同じことになり、ライン側置場の在庫もゼロとなる。しかしそんなことしたら輸送費が膨大になってしまうため、実際問題としては不可能だが、改善マンのイメージとしてはあるべき姿として頭に置いておく必要はある。

 トヨタ生産方式においては、“運搬はムダ”と明確に規定している。このような指示を受ければ改善マンの着想の第一 は、「なんとかしてムダな運搬をなくせないか」ということに置かなければならなくなる。そのためには離れている生産場所をくっつけてしまえばよく、そうなれば運搬はなくなる。具体的には、まず「生産拠点を同じ場所にできないか」ということを考えるのである。次に工場内のレイアウトを考えるのだが、これも「運搬が最も少なくなるように配置する」という考え方で進めればよい。

 生産拠点・工場内レイアウトが決定したあと、生産体制の改善が進められるのだが、その際、運搬が犠牲になりその工数等が増大してしまう傾向になるのは上記の通りだ。これも「運搬はムダ」と憲法に規定されている以上、運搬部門は反論できないのだ。


「平準化」「ロット+平準化」「ロット」の3者を対比してみた。「ロット」では部品倉庫が必要になる。そうなると部品倉庫からライン側置場への運搬が必要になるのだが、ここに膨大なスペースロス、工数ロス、品質ロスが発生する。「平準化」は定期便の多回納入で部品倉庫を不要にしてしまう。また「平準化」により初めてかんばんが回転する。ロット生産で部品倉庫が存在する以上、かん ばんは絶対に回転しない。

上がトヨタ組立ラインと部品メーカーとの間の定期便のイメージ図で、下がトヨタ組立ラインとトヨタ内製工程との間の部品引取り便のイメージ図だ。両方ともトヨタ組立ラインからかんばんが振り出されている。トヨタ組立ラインは“後工程”なので、これを“後工程引取り”または“引っ張り方式”という。トヨタ組立ラインにトラブルが発生した場合にはかんばんが振り出されないので、部品の供給がストップする。後工程の状態を前工程が常に把握できる。

この図はロット生産から平準化生産への進化を鳥瞰してみた。平準化すると部品倉庫がなくなり定期便が動きかんばんが回転することが分かる。部品倉庫が存在する以上、そこの倉庫係が必要になる。しかし平準化まで進化すると部品倉庫がなくなるのだから倉庫係が必要なくなる。

 定期便は荷受先と発送元の往復を繰り返す。荷受先に荷物を降ろした帰り便には、降ろした数と同じ数の空箱を載せて発送元へ返却させる。このようにして通い箱にしている。新設部品が発生する都度、その「形状」「重さ」「生産数」等を勘案してどのような種類のポリ箱にするか、その収容数は何個にするかを決定する。そしてかんばんを作成しそこへは、「品名」「品番」「置場番号」「収容数」「発送元名」「荷受先名」を記載して、すべての通い箱に添付する。

 ロット生産をしていると、各拠点が部品倉庫を持たなければならなくなる。部品倉庫があれば大量輸送にして輸送コストを削減しようと考える。こうなると輸送はワンウェイにならざるを得ないので、その荷姿は使い捨ての段ボール等になる。そして組立ライン等で使用する段階になって、倉庫係が必要な部品をそこから探し出す。納入してから時間が経ってしまっているので、もう一度品質チェックもしなければならない。もちろんかんば んも回転しない。このように在庫を持つことで、計り知れない損失が発生する。

実・・・・部品の入った通い箱

空・・・・部品の入っていない通い箱

 実空運搬とは、トヨタ組立ラインの部品受入ヤードで、実入り通い箱と空の通い箱の同数を効率的に交換するしくみだ。

 平準化することで、定期便ができ、それにより帰り便が発生するため、通い箱が可能になる。さらに多数あるラインごと にかんばんを色分けして、部品メーカーにはその色ごとにスキット(部品箱を載せる樹脂性の板)を分けさせる。そして納入便トラックの運転手には色別に分か れた置場にそれぞれの色のスキットを置くようにさせる。そして最後に同じ数量の空箱の載ったスキットをトラックに載せて帰る。

 「平準化⇒定期便・かんばん⇒通い箱⇒実空運搬」というように改善が改善を呼んでいることが分かる。


実空(みから)運搬

1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。

1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。

トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管理)、などを経験。

一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。

2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。

退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。

2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。

青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール

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