トヨタの生産方式に関して

「あんどんの進化過程」 第22回

青木幹晴

1.あんどんのあるべき姿(図1、図2参照)

 トヨタの機械加工ラインでは工程順に機械が並べられている。この事例では、すべて機械がMCT(マシン・サイクル・タイム)72秒加工して次の機械へ自動搬送される。そのためこの工程の最後では72秒で1個が完成する(1時間では50個できる)。
 ここでの人の作業は次の通りであり、すべてあんどんの点灯を見て行動する。
  • ⅰ.品質チェック(一定個数間隔での抜き取り検査。一定数に達する少し前で黄点滅。一定数で赤点滅と同時に機械停止)
  • ⅱ.刃具交換(一定数削ったら交換。一定数に達する少し前で黄点灯。一定数で赤点灯と同時に機械停止)
  • ⅲ.自動部品供給装置への部品の補充(なくなる少し前に黄点灯。なくなったら赤点灯と同時に機械停止)
  • ⅳ.機械への潤滑油の供給(基準以下になったら赤点滅と同時に機械停止)
  • ⅴ.設備故障への対応(機械故障により停止したら赤点灯)
 すべて黄点灯(黄点滅)で人が駆けつけることができれば、機械は休みなく加工し続け1時間に50個できる。それに対応するにはこの工程へ4名投入しなければならないとする。翌月になって、生産数量が半減の1時間25個でいいことになったとする(MCTは変更できない)。すると投入人数を2名に減らす。2名では迅速な対応ができず、このラインの至る所で赤点灯が起こる状態になる。しかしこの停滞により出来高は半減するのだから問題ないわけだ。
 50個/時間・・・・・・4名
 25個/時間・・・・・・2名
 このようなあんどんによる指示により、「生産の増減とパラレルに人を増減できるライン」が可能になる。

2.一般会社でのあんどん進化の過程

 一般会社の工場にあるほとんどすべての機械にはパトライトがついている。私はクライアントに行った際、パトライトのそれぞれの色の意味を現場作業者に聞いてみるが、ほとんど答えられない。そこでパトライトの色の意味を全て調査し表示してもらうところから改善を始める。
 このパトライトは機械設計者がいろいろな有益な情報の信号をここへ引き出してくれているものだ。従ってユーザーである現場作業者がそれを活用しないといことは非常にもったいないことなのだ。
 そこであんどんの評価点(図3参照)として、パトライトだけを1点として(図4参照)、それに意味を表示した場合2点とした(図5参照)。
 次にパトライトを通路方向へ向きを変えて、通路の向こうにいる監督者にも見えるようにする努力をしているので3点とした(図6参照)。
 次に高い位置にデジタル数字板を取り付けて、適正範囲の数字まで表示している。これで第三者に対しても異常かどうかが明確に分かるようになった。さらに異常域に入ったら赤ランプも点灯するので更に認知し易くなっている(図7参照)。
 最後は十分活用されている事例だ。
 図8はオンラインデータをパソコン画面でその都度確認していたのを、大画面を柱の上に取り付けて誰もが即座に確認できるようにしている。
 図9は、8本のラインで異常が発生した場合に点灯する。作業者が該当ラインへ駆けつけると5個のランプのどれかが光っているので、異常の発生内容がそこで分かるようになっている。
 図10は韓国のクライアントのあんどんだが、ここまで来ればトヨタのあんどんとまったく変らない。
青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール
1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。
1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。
トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能 を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管 理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管 理)、などを経験。
一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。
2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。
退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。
2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。