トヨタの生産方式に関して

「塗装工程~鍛造工程への工程内かんばん」 第25回

青木幹晴

 エンジン部品を例にとってみると、その工程は「車両組立←エンジン組付←機械加工←塗装←鍛造」というように連なっている。今回は塗装工程から鍛造工程へと工程内かんばんのしくみを説明してみたい。
 私は商学部を卒業したので希望して経理部へ配属させてもらった。そして商学部では勉強していなかった税務関係の知識が必要になり、終業後、簿記学校へ通って税理士試験の勉強をしていた。将来は経理マンとして身を立てようと希望に燃えていたのだ。
 そんな折、急に、本社工場工務部原価グループへの異動命令が下った。本社機能から工場機能への異動であり、正直、目の前が真っ暗になり、今後の人生はこれで終ったとまで思いつめた。しかし同じ経理関係の仕事ができるのだから諦めた。
 そして作業服に着替えて、工場原価マンの仕事が始まった。担当業務は、鍛造部の変動費予算管理だった。Y先輩に1から教えてもらったのだが、その内容はどんな経理関係の教科書にも載っていない、素晴らしいものだった。
「量産工場にNCマシンが不適な理由」
 トヨタのエンジン工場は機械加工の初工程から組立の最終工程まですべて1個流しラインになっている。クライアントの工場へ行くと、ほとんどがこの図の改善前のロット生産の工場なので、改善後のトヨタエンジン工場のイメージ図を示して、あるべき姿を想像させている。その上で一歩ずつ改善させている。
 例えば、トヨタエンジン工場が1分に1台完成エンジンを生産するためには、すべての工程を1分単位に区切って、それぞれの工程が1分加工をしたら次の工程へワークを送るようにしなければならない。
 しかしそうなると、いくら自動機であっても1工程に1人の作業者を付けなければならなくなる。その対策として、自動機が作業者の対応が必要になった場合、みずから自動停止するようにし、さらにそのことをあんどんを点灯させて作業者に知らせるようにする(このことを自「働」化という)。作業者はあんどんが点灯した機械へ駆けつけ必要な作業を行う。
 あんどんには赤、黄、白の3つのランプがある。
 赤ランプ・・・「規定数に達したので、その決められた作業を行わなければいけない」ということで、機械は停止してしまう。作業者はその決められた作業を行なわなければ、機械を再稼働させることができない。
 黄ランプ・・・「もうじき規定数に達する。そうすると機械が停まって生産できなくなるので、至急ここに来て機械が停止する前にやる必要がある」
 白ランプ・・・作業者が到着した。品質チェックの場合は、該当するワークをラインから取り出して品質チェック台の上に置いて、そこの電灯のスイッチをオンにする。するとあんどんに信号が飛んで、点灯していた黄ランプもしくは赤ランプが消え、白ランプが点灯する。また刃具交換の場合は機械を連続運転から各個操作に変更して作業を行う。するとこれも点灯していた黄ランプもしくは赤ランプが消え、白ランプが点灯する。他の作業者が作業を終えて次の作業へ移るためあんどんを見ると、白ランプの所は誰かが作業中であることが分かるので、他に点灯している赤ランプか黄ランプの所へ行くようにする。
 上記で具体的に説明する。改善前は作業者がこの機械に張り付いていて4000という規定数に達するまでずっと監視する必要があった。この機械は自動機なので何もせずずっと立っているだけだった。しかし改善後は規定数に達すれば機械が自動的に停まって、そのことをあんどんが点灯して知らせてくれるので、作業者はこの機械のそばにいる必要がなくなり他の機械も担当する多台持ちが可能になった。また3800で黄ランプが点灯するので規定数に達する前に来ることができる。
 ある自「働」化工程で、例えば6名投入すれば、黄ランプの点灯ですべて急行し処置ができ、赤ランプはまったく点灯することがない、フル生産ができるとする。この工程で生産数が丁度半減したとするなら3名投入する。すると赤ランプがいっぱい点いてラインのそこここで機械が停止してしまう。機械の加工速度(マシンサイクルタイム)の調節はできないのでこのような現象が起きてしまうのだ。しかしこれによりアウトプットは半減するからこれでいいことになる。
 6名投入・・・・フル生産・・・・・・・出来高1
 3名投入・・・・1/2稼働停止・・・・出来高1/2
 機械加工ラインはこのようにして、生産の増減で人を増減できるラインづくりを実現させている。
 さてここまで踏まえた上で、NCマシンを考えてみたい。NCマシンとは1台で多数の刃具を持っていて、1回のセットで1つのワークを完成させてしまうというものだ。この例で言えば、5本の刃具を持ち、1本が1分研削して5分で完成させる。
 もしトヨタの1分で区切られたラインに、この5分のNCマシンが1台入ったとしたらどうだろうか。すべての1分の機械が1分加工して4分待つことになってしまう。そして完成品も5分に1台しかできなくなってしまう。
青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール
1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。
1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。
トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能 を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管 理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管 理)、などを経験。
一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。
2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。
退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。
2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。