トヨタの生産方式に関して

「工程の進化」 第27回

青木幹晴

 このロット生産をしている限り、品質改善、原価改善等のすべての改善を全く進めることができない。このロット生産から一歩一歩工程を進化させていくことにより、すべての改善が自然に進んでいく。
 ロット生産の弊害を列挙してみたい。
  • 1. 工程内に多くの仕掛品があり、生産リードタイムが非常に長い。
  • 2. 作業者は同じ物を大量に造るため、部品取り付け忘れが発生した場合、大量に発生させてしまう。
  • 3. 作業者は同じ物を大量に造るため、不良品を造ってしまった場合、大量に発生させてしまう。
  • 4. 品質チェックをして不良を発見しても、大量に造ってしまったあとで時間も経過しており、原因の究明がしにくい。
  • 5. 一人当たりの作業時間が非常に短いため、各作業者へ均等な作業時間の割り当てができない。そのため作業時間の短い作業者に遊びが出てしまう。
 ここで1個流し化に工程を進化させた場合、上記の問題点はすべて解消される。
  • 1. 生産リードタイムが非常に長い⇒工程内の不要な仕掛品がゼロになるため、生産リードタイムはその分が短縮される
  • 2. 作業者は同じ物を大量に造るため、その内の1つぐらいは部品取り付け忘れが発生してしまう⇒一人の作業者が1個ずつ造っていくため、部品の取り付け忘れはなくなる
  • 3. 作業者は同じ物を大量に造るため、不良品を造ってしまった場合、大量に発生させてしまう⇒一人の作業者が1個ずつ造っていくため、その標準作業の中に品質チェックも入れてその都度チェックしていくので、不良を発見してもそれ1つだけである。
  • 4. 品質チェックをして不良を発見しても、大量に造ってしまったあとで時間も経過しており、原因の究明がしにくい⇒不良を発見した場合、今それを発生させてしまったところなので、その原因が簡単に突き止められる。
  • 5. 一人当たりの作業時間が非常に短いため、各作業者へ均等な作業時間の割り当てができない。そのため作業時間の短い作業者に遊びが出てしまう。⇒1個流し化した場合、一人の作業者が最低でも1分の作業をしてから次の作業者へワークを渡す。作業の要素は非常に短いので、1分あれば均等な区分がし易くなる。
 ロット生産から1個流し生産に1段ステップアップしただけで、生産リードタイムは最短化され、種々の問題は霧散してしまう。しかしトヨタ生産方式から見ると、ここはその入口にたった所であり、ここからが本当の改善なのだ。
青木幹晴(あおき みきはる)プロフィール
1955(昭和30)年、愛知県豊橋市生まれ。
1978(昭和53)年、早稲田大学商学部を卒業。
トヨタ自動車工業へ入社以来、人事部(海外人事関係)、経理部(債権債務管理)、財務部(輸出入経理)などの本社機能 を経て、現場の本社工場・原価グループ(鍛造工場能率・製造予算管理、たな卸し本社工場事務局)、本社工場・生産管理室(車体・塗装・組立工場生産管 理)、米州事業部(海外生産車の原価企画)、田原工場・原価グループ(成形工場能率・製造予算管理)、田原工場・生産管理室(エンジン・鋳造工場生産管 理)、などを経験。
一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」ともいえる「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」としての「トヨタ生産方式現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」等で、多数の表彰を受ける。
2004年、基幹職(課長級以上)のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職。
退職後、オーエスジー株式会社へ入社し、トヨタ生産方式の導入に活躍。
2007年、オーエスジーを退職し、豊田生産コンサルティング株式会社を設立。