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日本の製造業で重要視される技術継承とは?現状と今後の課題・解決策を解説

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日本の製造業界では今、技術継承の重要性に注目が集まっています。ものづくりを行う製造業において、品質の高さを維持していくためにはベテランから若手に向けての技術継承が必要不可欠。しかし少子高齢化が著しく進んでいる今、日本では技術を受け継ぐ若手がいない状況に陥っているのです。
日本の製造業が今後も高品質なものづくりを続けていくためには、若手となる人材に技術継承への関心を持ってもらうことが大切です。日本における製造業の技術継承が必要な理由と、解決策について解説していきます。

【目次】

■製造業における技術継承はなぜ重要なのか?

・ベテランの知識やノウハウが途絶えてしまう

・製造業の多くが技術継承に問題点を抱えている

・製造業としての海外技術は向上の一途を辿っている

■技術継承が進まない理由

・企業が技術継承に重きをおいていない

・技術継承はベテランの負担増加につながる

・技術継承の手段が確立されていない

・技術継承する若手が足りない

■技術継承のための解決策

・若手人材を確保する

・技術継承を仕組み化する

・教育ツールを活用する

・技術継承を業務の一環としてサポートする

・デジタル化とIoTの活用

■技術継承問題への対策が競争力を高める鍵となる


製造業における技術継承はなぜ重要なのか?

経験と技術力を培ってきたベテラン技術者が支えてきた製造業。日本の製造業は国際競争力が低下し、質だけではなく生産量でもおくれをとっている現状にあります。その理由としてあげられるのが技術継承の問題点の多さです。製造業における技術継承の大切さと、問題点などを確認していきましょう。

ベテランの知識やノウハウが途絶えてしまう

まず技術継承とは、事業を続けていくために、ベテランの技術者が後継者となる若手にスキルや知識を伝えていくことです。つまり技術継承が行われないことによって、これまでベテランの技術者たちが受け継いできたスキルや知識、ノウハウが途絶えてしまうのです。これまでに伝えられてきた技術は、ただのものづくりの方法だけではなく、より効率的になるテクニックや、品質を高めるための一工夫なども含まれています。技術を使いこなすために必要な能力「技能」も含まれており、これは技能継承として大切にされています。
こうした数々の職人たちの積み重ねが途絶えてしまえば、製造業の武器である技術やノウハウが全て失われてしまうのです。後継者が現れないままベテラン勢が退職してしまうと、新たに入社した新人は自分で一から学び直さなければならず、品質はもちろん生産性も大きく下がってしまうでしょう。

製造業の多くが技術継承に問題点を抱えている

経済産業省の「2019年版ものづくり白書」では、製造業の86.5%が「技術継承に問題がある」と回答しています。2010年度時点では、技術者の雇用延長や指導者として活用していた企業は最も多く72.1%でしたが、2018年度になると56.6%にまで低下してしまっています。これに対し、新規学卒者を積極的に採用する企業や、中途採用を増やしている企業などは2010年以降、増加傾向にあります。
以前は団塊の世代の引退が技術継承の問題点として考えられていましたが、現在では技術継承の受け手側である若手の不足に重きを置く傾向にあります。このことから、極端にベテラン世代と若手世代が不足している企業が増えていることがわかります。

製造業としての海外技術は向上の一途を辿っている

モノづくりにおける高い評価を集めてきた日本ですが、最近では海外企業の製造業が勢いを増し、技術の向上が見られます。日本企業の海外進出や、国外の製造拠点展開などによって技術・技能が流出しているためです。先進技術の進化も手伝って、現在では日本と諸外国との間の品質差は縮まっています。
海外技術は向上しているのに対し、日本では少子高齢化によって若手が不足しているため、技術継承が上手くいっていません。実際に、半導体産業では1988年から2019年までに日本のシェア率が大きく低下しており、このままでは更に日本の製造業が衰退していくことが懸念されます。
参照:日本の半導体産業の現状(国際的なシェアの低下)│経済産業省

このように技術継承に問題がある業界ですが、今、製造業に就業することで、技術継承のためにじっくりと時間をかけ技術やノウハウを継承してもらえる状況ともいえます。もし製造業での就職に興味がでた場合、ぜひ製造業の求人サイト「はたらくヨロコビ」をチェックしてみてください。
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技術継承が進まない理由

日本の製造業では技術継承が欠かせません。しかし重大性を理解しているのに技術継承をうまく進められていない企業が多いのには、以下のような理由・要因が隠されています。

企業が技術継承に重きをおいていない

近年になってやっと製造業における技術継承の問題点が重要視されてきた理由は、これまで技術継承を軽視する企業が多かったからです。技術継承は伝承者であるベテランだけではなく、企業全体が一丸となって取り組む問題です。しかし技術継承を全てベテランにゆだねてしまうケースが多く、結果として企業自体が後継者の技術習熟度を把握できない状況でした。
若手の育成レベルが及第点に到達する前にベテラン勢が退職してしまうようなケースもあり、その場合は十分な技術継承は行えていません。つまり技術継承を受ける後継者の知識や経験、特性を企業側が丁寧に把握しておき、どのようなベテランがどのような方法で教えていくかを企業が一緒に考えていくことが必要なのです。技術継承を軽んじている企業だと、ベテランとの連携がうまくいかず継承も不完全に終わってしまいます。

技術継承はベテランの負担増加につながる

製造業界そのものでは技術継承が重要視されているのに対し、その継承すべき技術をもつベテランたち自身が、技術継承にあまり関心を持っていないという背景もあります。ベテランたちにとっては技術を若手に教えるメリットがあまり感じられていないのです。若手への教育に時間が取られれば仕事の効率が低下するうえ、若手の上達スピードが思うようにいかなければ、ベテランたちは相当なストレスを抱えることになります。
ベテランたちにとって、技術継承にはメリットよりデメリットのほうが目立つというわけです。そのため企業として最もすべきことの一つが、若手に技術継承する意味や目的を理解してもらうことです。ベテランが技術継承とものづくりの仕事を両立できるよう、サポート体制を整えて職場環境を改善していくことが求められています。

技術継承の手段が確立されていない

ベテランから若手に対する教育方法が確立されていないことも、技術継承が進まない要因となっています。年代が違うため育ってきた環境も大きく異なり、例えばベテラン世代が「百聞は一見に如かず」の風潮であるのに対し、若手は丁寧なマニュアルやフォローアップを求めている状況になることがあります。つまり教育に求めるものに食い違いが生じてしまっているため、ベテランの指導方法に若手がついていけていないというケースが増えているのです。
ベテランは若手の飲み込みの悪さに不満を抱き、若手はベテランの教え方に不満を抱きます。技術継承の手段が丁寧に確立されていなければ、教える側と教えられる側の間に不信感が生まれ、継承の途中で若手の退職につながります。技術継承をしっかり行うためには、ベテランから若手への教育方法に生まれる課題を企業が汲み取ってサポートすることが大切です。

技術継承する若手が足りない

技術継承を行うには、教えるベテランと教えられる若手が不可欠です。日本では肝心の若手が不足しているため、多くの製造業では技術継承をしたくてもできない状況に陥っているのです。少子高齢化に伴って若手が不足していることに加えて、若手の興味関心が製造業以外の業界に向きがちな現状も理由の一つ。
そのため企業は若手人材の確保に取り組む必要があり、企業説明会やSNSなど、若手に効果的なアプローチを通じて、製造業の楽しさや社会的な重要性を発信していく必要があります。就職を控えた学生に働きかけるため、大学・高校との繋がりをもつことも重要です。
また、せっかく入社した若手も教育時のストレスやトラブルが原因で、すぐに退職してしまうケースもあります。若手の入社を促すだけではなく、入社した若手が仕事を続けていける環境づくりも同時に求められています。

技術継承のための解決策

製造業における技術継承の問題を解決していくためには、企業側がベテランと若手の双方に働きかける対策や解決策を練る必要があります。人材の確保や技術継承の方法に重点を置いた、以下のような方法が求められています。

若手人材を確保する

ただでさえ少子高齢化によって若手の数が不足している今、若手人材を確保するための対策は欠かせません。若手の目線に立ったアプローチで製造業や企業のアピールをし、興味を持ってもらう必要があります。例えばSNSや動画、サイトなどを通じた方法が効果的とされており、実際に各分野の職人を目指す候補学生を募るマッチングサービスなどの活用例も増加中。技術を「託したい」「受け継ぎたい」人や企業を結び、両者の面談や交流を後押しするサービスに期待が集まっています。
また伝統工芸分野では全国各地で後継者不足が深刻化されており、この問題を解決するためのプロジェクトなども積極的に展開中。例えば産地では各工房で学生向けの就業体験も実施されており、仕事だけではなく移住のアピールとしても活用されています。もちろん伝統工芸分野だけではなく、製造業の多くが目指す若手や興味をもつ若手向けの情報サイト・SNSアカウントなども積極的に情報発信を行い、若手の目線でアピールを実践しています。

技術継承を仕組み化する

知識や治験、スキル、ノウハウといった、業務遂行に役立つ多くの情報を「ナレッジ」と呼び、これらを可視化して企業全体で共有することをナレッジマネジメントと呼びます。ナレッジマネジメントを導入することにより、業務の効率化や技術継承の改善につながると考えられています。
企業などの組織が保有する知識には、個人が蓄積した経験やノウハウなど、言葉や図で表現されていない「暗黙知」と、明確に文章や図、言葉で表現されている「形式知」の2種類があるとされています。ナレッジマネジメントではこの暗黙知を形式知に変換(言語化・図表化)し、形式知を実践して新たな暗黙知を獲得していく…と、繰り返すことでナレッジが洗練されていくことが期待されます。例えば複雑な職人技術は暗黙知とされていますが、これを明確な言葉・文章・図表などによって表現することにより、高度な知識をわかりやすく共有しやすくするのがナレッジマネジメントのねらいです。
製造業でナレッジマネジメントを取り入れることによって、技術継承が仕組み化されれば短期間で即戦力となる人材を効率良く育成するという課題にも立ち向かえるようになり、働く側としても技術や業務のコツが理解しやすくなります。

教育ツールを活用する

技術継承のための教育ツールはさまざまあります。直接ベテランから見聞きするだけではなく、マニュアルの作成やツール・システムの導入などによって教育環境を効率化できる場面は多数あるでしょう。例えば動画を活用した技術継承は単なるマニュアルよりも効果的と考えられており、スマートフォン端末やインターネットを駆使すれば、いつでもノウハウを確認できるようになります。
熟練技術者の目線からスピード・手元を確認しやすいため、言語化しづらい部分を動画マニュアルとして残す方法は多くの現場でも注目されています。動画だけではなくシミュレーションなども用いて、一人ひとりの若手の学習状況を判断しながら正確な教育を行うのに役立っています。また、動画マニュアルは視覚的に手順や技術が伝わりやすいため、言語の壁が障壁にならないというメリットもあります。外国人労働者を雇う場面でも活躍する方法です。

技術継承を業務の一環としてサポートする

ベテランから若手への技術継承は、当人たちに相当な負担がかかります。特に新人への教育ではベテランへの作業負荷がかかりますから、事業者側から継承するためのバックアップ体制を整えることが必要です。例えば若手に作業前の自習時間を設けたり、継承する作業の優先順位をつけたりといった対策が求められます。また、ベテランが通常で受け持っている業務を他の人へ分担して生産性の向上を図ると、余裕を持って技術継承に時間を割けるようになるでしょう。
特に中小企業では人手不足が原因で、OJTを行う時間すらも受けられないケースも少なくありません。技術継承の問題解決のため、熟練技術者へのサポートとして、作業の調整や後継者となる若手人材のスキル把握など、企業側もサポートを積極的に行う必要があります。

デジタル化とIoTの活用

ベテラン人材のサポートをしながら若手に効率良く技術継承を行う解決策として、デジタル化技術やIoT技術を駆使することがあげられます。例えば動画マニュアルの作成をすることで、スマートフォン端末などを使って多くの若手が気軽に技術を学ぶことができるようになります。
事業者側が行う技術継承へのサポートとしても、設備やプロセスをデジタル技術によって監視し、データの収集・分析などを効率化できます。遠隔操作などによって生産性の向上を図ると共に、継承の受け手側の習熟スピードを丁寧に把握し、一人ひとりの適正を確かめながらの効果的なアプローチが可能になるでしょう。実際に動画教育システムの動画マニュアルを活用することによって、指導をする側・受ける側の精神的な負担が減ったという事例もあります。

技術継承問題への対策が競争力を高める鍵となる

日本の製造業がこれからも国際的競争化で勢いを保ち続けるためには、技術継承問題へどう立ち向かっていくかが肝要です。そのためにはまず、技術を教えるベテラン側と、教わる若手側のどちらにも技術継承の大切さを理解してもらった上で、対策を講じることが欠かせません。製造業の未来を切り拓き、支えていくためには以下のポイントを踏まえておく必要があります。
・若手の不足やベテランの退職が原因で、ノウハウや知識が途絶えてしまう
・技術継承が途絶えると製造業の競争力が失われ、国際的に引けを取ってしまう
・技術継承はベテランにも若手にも負担がかかりやすい
・企業側がデジタル技術や教育環境を整えて、技術継承をサポートする必要がある
製造業やものづくりの業界は、全ての人の暮らしに係わる身近な存在です。普段何気なく手に取っている商品も、長年にわたって受け継がれてきた技術や知識の結晶と言えるでしょう。そんな製造業が国際競争の激しい状況下で生き残っていくためには、品質・生産性の低下を防ぐことが不可欠。少子高齢化によってただでさえ技術の受け皿となる若手が減っている昨今では、一人でも多くの人に製造業に興味を持ってもらうことがポイントです。

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