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電気工事士を取得するメリットとは?仕事内容や就職先についても解説

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私たちの生活に必要不可欠になっている電気。そのインフラを下で支える縁の下の力持ちが電気工事士です。電気はあるのが当たり前になっているので、なかなか電気工事士の重要度を実感することは難しいかもしれません。今回は、電気工事士の実際の仕事内容や電気工事士資格の種類、試験内容を解説します。


電気工事士とは?

「電気工事」とは、電気設備が必要な建物を中心として行われる工事のこと。「電気工事士」とは、安全に電気が使えるよう、建物内の電気設備工事や電気設備管理をする人のことです。また、電気工事士は、電気工事に関する専門的な知識と技能を持つ人に与えられる国家資格でもあります。

ビルを新しく建てる際には、外の電柱から電線を引き込み、配電盤を設置し、各部屋に配線をして電力を供給します。すでに建てられている建物に対しては、故障した電気設備を修理したり、コンセントやエアコンなどを増設したりします。最近では、インターネットを使えるように、LAN配線なども行っています。

工事をするだけではなく、大きな商業ビルや鉄道に赴き、エレベータやエスカレータ、変電設備や防災設備などのメンテナンスを行うこともあります。このような電気周りの作業は、危険と責任が伴います。作業中に感電するおそれもありますし、欠陥工事によって漏電し、火災を誘発する可能性もあります。そのため、電気工事士として働くためには、試験を受けて国家資格を取得することが必要です。

電気工事で作業手順を間違えると、怪我をしたり、営業中のビル・店舗のブレーカーを落としてしまったりすることもあるため、性格的に慎重で、集中力がある人が向いています。現場で朝から晩まで電気工事にかかわるため、電気に関心があり、機械いじりが好きな人にも向いているといえます。

電気工事士は、技術の高さと積み重ねた経験値がそのまま給料につながる職人的な仕事です。厚生労働省の「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、電気工事従事者の平均給与は30.5万円程、平均年間賞与などは93.69万円程で、平均年収は約460万円となっています。会社の規模や携わった業務内容にもよりますが、電気工事士の資格があると手当てを上乗せする会社も珍しくありません。

電気工事士のメリットは、一生食べていくことに困らない、つぶしの利く技術を身につけられるところです。近年はスマートフォンを主とする携帯電子端末の普及やオール電化の住宅が増え、ますます電気の重要性は高まっており、電気がないと日常生活が成り立たないほどになっています。活躍の場は広く、社会のいたるところで需要がある仕事といえるでしょう。ほとんどの現場で電気工事は必須であるうえ、工事全体を取りまとめる「現場代理人」としても活躍できるため、電気工事士は工事現場に欠かせない存在です。手に職をつけるといった意味でも手堅い職業になります。

電気工事士を取得するメリット

電気工事士の業務範囲は広く、覚えることも多いですが、自分の手で電気を繋いだ設備が稼働するのを見たときの達成感はひとしお。現場が変わるごとに新しい経験を積み、できることがどんどん増えていくので、飽きることなく仕事に打ち込めるでしょう。

電気工事士を取得するメリットは、以下の3つです。

○DIYでできることが増える
○仕事の幅が広がる
○需要が高い

DIYでできることが増える

第二種電気工事士を取得すると、低圧(600ボルト以下)の電気工事に着手できます。具体的にいうと、電気のスイッチや照明器具の交換、コンセントの交換ができるようになり、自宅で電気工事の幅が広がるのです。これらの作業は慣れてしまえば簡単ですが、低圧とはいえ電気という危険物を扱う作業であるため、電気工事士の資格なしに工事を行うと罰則の対象になります。電気工事の材料はホームセンターで揃えられるので、自分でコンセントやスイッチ、照明を取り換えられるようになれば、安価に電気工事系のDIYができるようになります。

仕事の幅が広がる

電気工事を手掛けるのが電気工事士の仕事ですが、ひとくちに電気工事といっても多岐に渡ります。電気工事士の職場として、電力会社や鉄道会社だけではなく、建築会社や工務店、電気設備の会社、建物・施設の管理会社、家電製品のメーカーや販売会社など多岐に渡ります。電気関係の会社ばかりではなく、幅広い業種から必要とされる資格なので、仕事の幅も広がるでしょう。

需要が高い

電気工事士は、生活に根差した「電気」の専門家です。新規の工事だけではなく、維持・保守などのメンテナンスや、取り換え工事などでも電気工事士が必要となります。現時点でも需要の高い人材ですが、将来的には電気工事士が不足するかもしれないといわれています。なぜなら、2020年時点で、すでに第一種電気工事士の供給が2万人ほど需要を下回っているからです。また、第二種電気工事士も、2040年ごろには供給不足に陥るだろうと予想されています。

電気工事業の認知度が低い、離職率が高いという業界全体の課題はありますが、電気を扱える人材の需要はなくなることがないため、手に職を付けられる仕事といってもよいでしょう。

電気工事士の主な仕事内容

電気は重要なインフラの1つ。電気工事は、コンセントから電気が使えることや、防災・消化設備が問題なく稼働すること、いつも通り電車を利用できることなど、日々の「当たり前」を維持するために欠かせません。そんな電気工事の仕事は、主に「建築電気工事」と「鉄道電気工事」の2つに分けられます。

建築電気工事

建設電気工事において、電気工事士の代表的なお仕事は、建築物への電気設備の施工です。住宅やビル、商業施設、医療施設、教育施設、工場や農場、橋や道路といったインフラに至るまで、ほとんどの施設が電力を生命線に稼働しているのが現状です。

また、新設するだけではなく、増設やリフォーム、メンテナンスも電気工事に含まれます。作業内容は一言で言い表せないほど広く、需要の高い仕事といえるでしょう。建築電気工事のお仕事は、電気工事士(第二種)から携わることができます。

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鉄道電気工事

日本の鉄道にとっても、電気は欠かせない存在です。動力となる電気を送る架線の設置、信号や踏切、駅内の照明や通信機器まで、あらゆる場所に電気設備が備わっています。これらの設備を設置することはもちろん、故障しないための保守業務を行うのが鉄道電気工事の仕事です。主に架線の検査、メンテナンス、信号などの電力設備の検査といった、各種工事を請け負います。

鉄道業務の性格上、運行がストップしている深夜の作業がメインとなります。鉄道施設の電気工事は、特殊な条件をクリアした業者でないと対応することはできないため、鉄道を専門とした電気工事業を担う会社もあります。鉄道電気工事に従事する場合は、鉄道電気工事の仕事を請け負う会社に入社する必要があります。

鉄道関係の設備は大小さまざまなので、第二種・第一種どちらでもお仕事はありますが、第一種電気工事士や電気主任技術者に資格手当をつけている会社もあります。

第二種・第一種の違いは?

電気工事士は「第一種」と「第二種」に分類され、着手可能な電気工事の範囲が異なります。第二種は、一般的な住宅や小規模な店舗・ビルの電気工事しかできないのに対し、第一種はマンションや工場などの大規模な電気工事にも対応可能です。なお、第二種電気工事士の試験は年2回、第二種電気工事士の試験日は年1回、各都道府県の指定場所で行われています。
第一種は第二種の上位資格なので、初心者は第二種電気工事士から取得することをおすすめします。

<第一種と第二種の違い>
資格 受験資格 できること 対象となる人
第一種電気工事士 受験資格はない
▽免状交付の条件
電気工事士の実務経験3年以上
最大電力が500キロワット未満の電気工事 電気工事のスキルアップがしたい人
専門的知識をつけたい人
第二種電気工事士 受験資格なし 電圧が600ボルト以下の電気工事 電気工事士になりたい初心者
第二種電気工事士

第二級電気工事士は、一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事ができます。令和3年度の合格率は、筆記試験53%、実技試験67.9%です。

電気工事士第二種<試験の概要>
受験の申し込み ■受験手数料
インターネット申し込み:9,300円
書面申し込み:9,600円
■申込期日
【上期】3月下旬~4月上旬
【下期】8月中旬~9月上旬
受験 ■上期
・筆記試験:5月下旬(日曜日)
・技能試験:7月中旬(土曜日または日曜日)
■下期
・筆記試験:10月下旬(日曜日)
・技能試験:12月中旬(土曜日または日曜日)
免状の交付申請 ・都道府県知事へ、第二種電気工事士免状の交付申請を行います。
・都道府県条例で定める手数料が必要です。
免状交付 ・免状が交付されたら、第二種電気工事士となります。
電気工事士第二種<試験内容>
筆記試験の範囲 下記の理解度を確認する問題が、四肢択一のマークシート方式で出題されます。
(1)電気に関する基礎理論
(2)配電理論及び配線設計
(3)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具
(4)電気工事の施工方法
(5)一般用電気工作物の検査方法
(6)配線図
(7)一般用電気工作物の保安に関する法令
技能試験の範囲 筆記試験の合格者・筆記試験免除者を対象に行われる試験です。
持参した工具と支給される材料を使い、一定時間内に課題を完成させます。
(1)電線の接続
(2)配線工事
(3)電気機器及び配線器具の設置
(4)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
(5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
(6)接地工事
(7)電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定
(8)一般用電気工作物の検査
(9)一般用電気工作物の故障箇所の修理
参考:一般社団法人 電気技術者試験センター
第一種電気工事士

第一種電気工事士は、第二種の範囲と、最大電力500キロワット未満の工場・ビルといった高圧受電のある施設の工事ができます。令和3年度の合格率は、筆記試験46.7%、実技試験63.9%です。

電気工事士第一種<試験の概要>
受験の申し込み ■受験手数料
インターネット申し込み:10,900円
書面申し込み:11,300円
■申込期日
6月中旬~7月上旬
受験 ・筆記試験:10月上旬(日曜日)
・技能試験:12月中旬(日曜日)
実務経験 技能試験に合格して3年以上の実務経験を有する者が、第一種電気工事士の免状交付を受けられます。
※合格前の実務経験でも認められるケースがあります。
免状の交付申請 ・都道府県知事へ、第二種電気工事士免状の交付申請を行います。
・都道府県条例で定める手数料が必要です。
免状交付 免状が交付されたら、第一種電気工事士となります。
電気工事士第一種<試験内容>
筆記試験の範囲 下記の理解度を確認する問題が、四肢択一のマークシート方式で出題されます。
(1)電気に関する基礎理論
(2)配電理論及び配線設計
(3)電気応用
(4)電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料及び工具並びに受電設備
(5)電気工事の施工方法
(6)自家用電気工作物の検査方法
(7)配線図
(8)発電施設・送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性
(9)一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令
技能試験の範囲 筆記試験の合格者・筆記試験免除者を対象に行われる試験です。
持参した工具と支給される材料を使い、一定時間内に課題を完成させます。
(1)電線の接続
(2)配線工事
(3)電気機器・蓄電池及び配線器具の設置
(4)電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
(5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
(6)接地工事
(7)電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定
(8)自家用電気工作物の検査
(9)自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理
参考:一般社団法人 電気技術者試験センター
独学でも電気工事士を取得できる?

電気工事士には年齢・学歴といった受験資格の制限がありません。電気工事士技能試験に合格し、お住まいの都道府県から免状を交付してもらえば、晴れて電気工事士になれます。電気工事士の合格率は、第二種で5~6割程度、第一種で4~5割程度と、やはり第一種電気工事士のほうが難易度の高い試験だとわかります。とはいえ、きちんと勉強を重ねれば独学でも取得可能な合格率といえそうです。

電気工事士の試験は、第二種・第一種ともに、筆記試験と技術試験の2部構成です。筆記試験は四肢択一のマークシート方式で、配線図や工具に関する問題が出題されます。独学受験を目指す方は、電気技術者試験センターのホームページに公開されている過去の試験問題と回答も活用するといいでしょう。

また、動画サイトには、電気工事士の勉強で引っかかりがちなポイントを解説している動画も充実しています。学習を始めてみて壁にぶつかったら、違う教材を試してみるのもいいかもしれません。自力で勉強するのが難しいと感じたら、オンライン講座やスクールの力を借りるのも手です。

技能試験では、7種類の工具と試験に必要な材料を、すべて自分でそろえなければいけません。必要な工具は以下の通りです。

〇電工ナイフ
〇電工ペンチ
〇リングスリーブ用圧着工具
〇ドライバー(プラス・マイナス)
〇ウォーターポンププライヤ
〇スケール(巻尺・折尺など)

技能試験で初学者が始めにぶつかる壁は「線材の被膜をうまくはぎ取れない」や「輪作りが難しい」ではないでしょうか。技能試験では、1つでも「欠陥」とみなされると不合格になります。何度も繰り返せば慣れてきますが、どうしてもうまくいかないようなら、工具の力に頼るという方法もあります。技能試験では、電動工具以外であれば、指定以外の工具も持ち込むことができるからです。電工ナイフやペンチで被膜を剥くのが難しいという方は、VVFストリッパー、輪作りがうまくいかないという方はラジオペンチを試してみてもいいでしょう。

どの工具を買おうか悩んでいる方には、歴代の受験生に愛用されているHOZANの電気工事士工具セット DK-28をおすすめします。技能試験の指定工具に加えてVVFストリッパー(P-958)も入っており、単体で買うよりもお得です。

また、実技試験の練習に必要なケーブル・シーリング・コンセントなどの材料も自分で揃える必要があります。こちらも電気工事士の受験用にまとめられた部材セットが売っているので、筆記試験に合格したら工具と併せて購入しておきましょう。

まとめ

電気を扱う資格である「第一種電気工事士」「第二種電気工事士」について紹介しました。電気工事は危険と責任を伴う仕事であり、電気工事士は経済産業省が定めた国家資格です。高度な技術を追い求める向上心と現場で働ける体力、そして何より「電気工事が好き!」という気持ちで向き・不向きが決まります。

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