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危険物取扱者とは?主な仕事内容から甲・乙・丙種の違いや難易度、最初に狙うべき資格まで徹底解説!

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危険物取扱者という資格をご存じでしょうか。危険物取扱者は、「危険物」の取扱い業務を担う資格です。危険物には「引火しやすい」という特徴があり、取扱いに注意しないと火災につながる恐れがあります。そのため、大量に危険物を取扱う職場では、「危険物取扱者」の資格を取得した方を必要とします。今回の記事では、危険物取扱者の仕事内容や取得するメリット、試験概要について解説します。


危険物取扱者とは?

火災予防を目的とする「消防法」では、「火災の危険性が高い物質」を危険物と定めています。危険物取扱者とは、たくさんの「危険物」を取り扱うときに必須の国家資格です。危険物はその名の通り大変危険なものを指します。また、危険物には、車を動かすのに必要なガソリン、石油ストーブに注ぐ灯油、最近ぐんと身近になった消毒用アルコール(エタノール)も該当します。

ただ、いくら危険物とはいえ、少量であればそれほど危なくありません。各危険物には「指定数量」が決められており、指定数量より少ない量であれば、資格がなくても取扱うことができます。カセットボンベ、スプレー缶、アロマオイル、マニキュアや除去液といった引火しやすい商品を自宅で保管できるのは、これらの危険物が指定数量を下回っているからです。

ただし、指定数量以上の危険物を取扱ったり、保管したりする場合には、有資格者あるいは有資格者の立ち会いが必要です。例えば、ガソリンの指定数量は200リットルなので、ガソリンスタンドには危険物取扱者を置くことが義務付けられています。従業員は有資格者か有資格者の立ち会いの下で給油を行います。セルフガソリンスタンドではどうなのか気になるところですが、常駐している危険物取扱者が「給油許可」の指示を出す形で立ち合っているため、無資格の運転手でも給油ができるのです。

ガソリンスタンド以外にも、化学工場、石油貯蔵タンク、タンクローリー、研究所など、大量の危険物を扱う場所には危険物取扱者の設置義務があります。危険物取扱者の活躍場所は、みなさんが想像するよりもはるかに多いと言えるでしょう。

危険物の種類と資格区分

消防法で定める「危険物」は、以下のように第1類から第6類に分類されています。

【危険物の種類】
危険物
1 酸化性固体 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム
2 可燃性固体 硫黄、赤リン、マグネシウム
3 自然発火性物質及び禁水性物質 ナトリウム、リチウム、黄リン
4 引火性液体 ガソリン、灯油、軽油、エタノール
5 自己反応性物質 ニトログリセリン、トリニトロトルエン
6 酸化性液体 過酸化水素、硝酸

危険物取扱者だからといって、全ての危険物を扱えるわけではありません。以下のように、危険物取扱者の資格は甲種、乙種、丙種に分かれており、それぞれ取扱うことのできる危険物が異なります。

【危険物取扱者の種類】
資格区分 取扱うことができる危険物 無資格者への立ち会いが可能か 受験資格
甲種 第1類~第6類全て 可能 あり
(化学系科目の修了・乙種取得など)
乙種
(第1類~第6類に分かれている)
合格した類のみ 可能
(合格した類の危険物のみ)
なし
丙種 第4類の一部 不可能 なし
甲種(こうしゅ)

危険物取扱者の中で最も取得が難しいのは、唯一受験資格が定められている「甲種」です。甲種を受験するには、科学に関する教育を受けている・乙種危険物取扱者であるなどの条件を満たす必要があります。
甲種を取得すると、第1類~第6類全ての危険物の取扱い、無資格者への立ち会いが行えます。甲種は取得が難しい分、できることも多いのです。

さらに、甲種危険物取扱者として実務経験を6ヶ月以上積めば「危険物保安監督者」になれます。

乙種(おつしゅ)

乙種は第1類~第6類に分類されており、合格した類(区分)の危険物に関してのみ取扱いや無資格者への立ち会いが可能です。

もし危険物の種類を増やしたい場合は、別の類の試験を受けなければいけません。例えば、乙種第2類(乙2)に合格したら、マグネシウム・硫黄などの「可燃性固体」を取扱えるようになります。一方、ガソリン・灯油といった「引火性液体」を扱いたい場合は、乙種第4類(乙4)の試験にも合格する必要があります。

乙種で全6種をそれぞれ受けるよりも、6種全ての危険物が取り扱える甲種にチャレンジしたほうがいいのではと思われるかもしれません。しかし、乙種にはメリットが2つあります。1つ目は「受験資格がない」こと。2つ目は、条件を満たせば受験科目が一部免除になることです。例えば、乙種を1つでも取得していれば、別の類を受ける際に「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学」が免除されます。

また、甲種と同じく、乙種危険物取扱者として実務経験を6ヶ月以上積めば「危険物保安監督者」になることができます。ただし、「甲種」と「乙種第1~6類」とでは、以下のように危険物保安監督者になった際に扱うことができる危険物が異なります。

資格区分 危険物保安監督者になるための条件 危険物保安監督者として取扱うことができる危険物(★)
甲種 第1類~第6類のいずれかの危険物を実務で6ヶ月以上取扱うこと 第1類~第6類全ての危険物
乙種全種 実務で6ヶ月以上取扱った類の危険物のみ

違うのは(★)の項目です。甲種であれば、該当の危険物を実務で扱ったことがなくても保安監督者になれます。例えば、ガソリン(第4類)の実務経験しかなくても、過酸化水素(第6類)の保安監督が可能です。しかし、乙種全類の場合は、実務経験を積んだ類の危険物に関する保安監督しか行うことができません。

また、甲種で危険物保安監督者になると、自動的に「甲種防火管理者」、「甲種防災管理者」になれます。対して乙種全類の場合は防火・防災管理者になるための講習を別途受ける必要があります。

丙種(へいしゅ)

丙種に合格すると、第4類(引火性液体)の一部を取扱えるようになります。具体的には、ガソリン、灯油、重油、軽油、潤滑油、動植物油類などです。ガソリンスタンドや自動車工場での勤務、タンクローリーの運転、危険物の製造所などで役立ちます。

また、丙種の場合も乙種と同じく受験資格がなく、条件を満たせば科目免除もあります。ただし、甲種や乙種とは違って「立ち会い」が認められておらず、無資格者に危険物を扱わせることはできません。

丙種と乙種4類のどちらを取得するかは議論になるところですが、危険物取扱いが業務の一環である場合は、試験の難易度と業務可能な範囲を踏まえた結果、乙種4類を受験する人が多いようです。丙種で取扱える危険物を仕事で使う機会がある方、仕事で危険物に触れる機会はないけれど興味があるという方は、腕試しに丙種を受験してもいいかもしれません。

危険物取扱者の主な仕事内容

指定数量以上の「危険物」を取扱い・運搬・保管する場所には、危険物取扱者の配置が義務付けられています。そのため危険物取扱者の求人は常に安定した需要があり、資格を取得すれば就職や転職に有利です。危険物の取扱い・保管をしているのは、ガソリンスタンドや化学工場といった危険物そのものを扱う場所だけではなく、ボイラー用の燃料を保管しているホテルや旅館といった宿泊施設も該当します。

危険物取扱者は、施設ごとに設置しなければならないため、大きな企業ほどたくさんの有資格者を雇い入れなければなりません。そのため、危険物を取扱う企業に在籍している場合は、資格手当が支給されたり、正社員に登用されたりすることもあります。

危険物取扱者の主な仕事内容は、以下の3つです。
◯危険物の取扱い・立ち会い
◯危険物の運搬
◯危険物の保守・保管

危険物の取扱い・立ち会い

危険物を使用する業務を行います。甲種・乙種は、立ち会いをすることで無資格者に危険物を用いた作業をさせることが許されているため、現場監督のような立場を任されることもあります。イメージしやすいのは、ガソリンスタンドでお客さまの車に給油をしたり、セルフガソリンスタンドで給油許可を出したりする業務でしょう。

物流施設・消防施設・バス会社・工場などで働くときには、自家用給油取扱所(自社敷地内にある給油施設)からガソリンや軽油を給油することもあるため、危険物取扱者の資格を取得しておくと役立ちます。

危険物の運搬

危険物を載せた車両を運転する業務を行います。主に、ガソリン・劇薬などの危険物を運ぶ「危険物タンクローリー」に関わる仕事ができます。危険物を運搬する際には、タンクローリーの運転手か同乗者が危険物取扱者の資格を保持していなくてはなりません。なお、有資格者が同乗者になる場合は、立ち会いが認められている甲種・乙種に限ります。

危険物の保守・保管

危険物を管理する施設の定期点検・保安業務を行います。一見すると危険物を扱っていなさそうな施設でも、燃料として危険物を保管していることは珍しくありません。例えば、ホテルや旅館は、客室や温泉施設にお湯を供給するためのボイラーが設置されており、燃料を大量に保管しているところもあります。大型施設の管理に携わる際には、危険物取扱者の資格を持っていると採用されやすくなるでしょう。

また、危険物を保管する危険物倉庫への入庫・出庫業務や入庫見守り業務を行うこともあります。製造工場は、製造過程で大量の危険物を扱う場合があるため、危険物取扱者の資格を持っていると優遇される可能性も高くなります。製造スタッフ、倉庫の入庫見守り、数量チェックといった簡単なお仕事が多いので、久しぶりにお仕事を再開したいという方にも向いています。

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最初は「乙4」を狙おう!

どの区分を取得すればいいか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そんな方には、まず乙種4類(乙4)の取得をおすすめします。

なぜなら、乙4で取扱うのはガソリン・灯油・軽油といった身近な危険物だからです。乙4の危険物を取扱う職場は多いため、安定した需要もあります。実務で役立てやすいうえ、石油や化学製品を扱う会社に就職・転職する際にも有利でしょう。甲種とは違って受験資格がない点や、丙種とは違って無資格者への立ち会いができる点も魅力です。

また、身近な危険物を取扱うため乙4の受験生は多く、参考書や講座が充実しています。消防試験研究センターでは、危険物取扱者試験で「過去に出題された問題」が掲載されていますし、乙4の内容を丁寧に解説している動画もたくさん公開されています。はじめてでも理解しやすいコンテンツが多く、比較的取り組みやすい試験です。

乙種4類の試験問題が難しく感じる方は、まず丙種を受けてみるといいでしょう。また、甲種の受験資格がある方にとっては乙種の試験は簡単でしょうから、そのような方は最初から甲種を受けてしまう手もあります。

乙種4類については、以下の記事でも詳しく紹介しています。乙種4類の概要が知りたい方や乙種4類を受講したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
人気資格!危険物取扱者の乙種4類って?取得するメリットなどを解説!

危険物取扱者試験の試験概要

危険物取扱者試験の受験資格・受験料・免除項目は以下の通りです。

【受験資格】
甲種 甲種危険物取扱者試験の受験資格は、次のいずれかに該当します。
■以下の大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した方
○大学、短期大学、高等専門学校、専修学校
○高等学校の専攻科、中等教育学校の専攻科
○防衛大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等
■以下の大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した方
○大学、短期大学、高等専門学校(専門科目のみ)、大学院、専修学校
○大学、短期大学、高等専門学校の専攻科
○防衛大学校、防衛医科大学校、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等
■「乙種危険物取扱者」の免状を交付されており、実務経験2年以上の方
■以下4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている方
○第1類または第6類
○第2類または第4類
○第3類
○第5類
■化学に関する事項を専攻している修士・博士の学位を持つ方(外国の同学位も含む)
乙種 受験資格はありません。
丙種
【受験料】
甲種 6,600円
乙種 4,600円
丙種 3,700円
※各消費税非課税
【免除項目】
甲種 免除項目はありません。
乙種 ■「乙種危険物取扱者」資格を持っている方
■「乙種危険物取扱者」資格を持っている方
○1~6類の「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」科目の全てが免除されます。

■「火薬類取扱保安責任者」資格を持っている方
○1類、5類の「危険物に関する法令」科目の全てが免除されます。
○「基礎的な物理学及び基礎的な化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」科目の一部が免除されます。

■「乙種危険物取扱者」と「火薬類取扱保安責任者」両方の資格を持っている方
○「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」科目の全てが免除されます。
○「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」科目の一部が免除されます。
丙種 ■5年以上消防団員として勤務し、かつ消防学校で「基礎教育」か「専科教育の警防科」を修了した方
○「燃焼及び消火に関する基礎知識」科目の全てが免除されます。

危険物取扱者がどんな資格かわかったところで、気になるのはその難易度ではないでしょうか。実は危険物取扱者は、国家資格の中では比較的取得しやすいものとして知られています。

以下に甲種・乙種・丙種の各試験内容と合格率を示します。

資格区分 合格率(%)
(令和3年度の平均値)
試験科目 問題数
甲種 39.6% 危険物に関する法令 15
物理学及び化学(★) 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 20
乙種 第1類:70.5%
第2類:72.3%
第3類:71.0%
第4類:36.1%
第5類:71.0%
第6類:70.7%
(乙種合計:43.3%)
危険物に関する法令 15
基礎的な物理学及び基礎的な化学(★) 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10
丙種 51.4% 危険物に関する法令 10
燃焼及び放火に関する基礎知識(★) 5
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10

試験科目ごとに60%以上正解することが合格基準となります。1教科でも60%に満たなければ不合格となる点に注意しましょう。

試験科目に着目すると、各資格区分で違うのは(★)です。この科目においては甲種の「物理学及び化学」が最も難しく(高校レベル)、乙種の「基礎的な物理学及び基礎的な化学」が続き(中学レベル)、丙種の「燃焼及び放火に関する基礎知識」が最も簡単な内容です。このことから、試験の難易度は甲種>乙種>丙種であるといえます。

乙種や丙種の場合は試験科目が一部免除になることがありますが、甲種では免除は一切ありません。そして丙種試験は4択マークシート方式ですが、甲種・乙種の場合は5択です。これらも甲種の難しさの一因となっています。

危険物取扱者は国家資格にしては合格率が高く、取得しやすい資格です。そのため、働きながら市販の問題集や通信講座などを利用して勉強する方も多くいます。

危険物取扱者の受験申請の方法は?

危険物取扱者の試験会場は都道府県ごとに異なり、中央試験センター(東京)や道府県支部で実施されています。受験を希望する場合は、お住まいの都道府県にて書面申請または電子申請を行います。また、試験日程や会場、願書受付期間などは全国一律ではないため、詳細は「一般財団法人消防試験研究センター」のホームページでご確認ください。

書面申請の方法

受付期間を確認し、中央試験センターか受験地にある道府県支部から願書を取り寄せてください。期間内に願書を記入し、願書に試験手数料支払証明書を貼付して、送付または持参することで受験申し込みが可能です。願書の提出が完了したら、受験日の1週間前までに「受験票」が届きます。

電子申請の方法

電子申請をされる方は、消防試験研究センターの電子申請フォームへアクセスし、手順に従って申し込みを行ってください。受験受付が完了したら、後日「受験票ダウンロードについて(通知)」というメールが届き、サイトから受験票をダウンロードできるようになります。

資格取得後の受講義務

資格取得をしても、すぐに危険物を扱えるようになるわけではありません。危険物取扱者として作業に従事するためには、手数料を支払って「免状」を交付してもらう必要があります。また、危険物を取り扱う作業をしている方は、定められた期間ごとに保安講習を受講する義務があります。ただし、危険物の取扱い作業をしていない場合は受講しなくても問題ありません。

危険物取扱者の資格には有効期限がなく、作業前に講習を受けさえすれば、いつでも危険物の取扱業務に従事できるようになります。ブランクがあっても仕事に復帰しやすい資格といえるでしょう。

まとめ

危険物取扱者とはどのような資格なのか、難易度やメリットとともにご紹介してきました。危険物取扱者は取得しやすいうえにメリットも多い資格であるということがわかっていただけたかと思います。

危険物取扱者は、消防法で定められた危険物を取り扱うことができる資格です。在籍社員に危険物取扱者の取得を求める企業も多く、資格手当が出ることもあり、就職・転職や実務でも活かしやすいでしょう。また、乙種に関して言えば、1つ取得すると試験科目が免除されるというメリットもあります。

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